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「こんな屈辱的な私ドヤ!?」痛みを伴うパフォーマーの追求する不確かなもの
短期集中連載・必殺裏仕事人

「日本のディープな場所で働く男女」に注目する本連載。前回、元M系のAV女優で身体改造パフォーマーの仕事をしている私の友人のカナエ(26歳・仮名)にインタビューして“普通コンプレックス”を解消するためにブッ飛んだことをしている話や、いつでも刺激を求めていること、観客にパフォーマンスを見られる苦痛こそが快楽であり興奮材料であることなどを聞いたけれど、まだまだ足りないわ。

豪快なタトゥーと蛇のようなスプリット・タンを持つカナエ。ショーの目玉である「ボディ・サスペンション」という、人体の皮膚に直接フックを通して吊り下げるパフォーマンスの実演モデルをし、スポンサー(いわゆる愛人契約ね)からの援助で生活している彼女の人生観を、掘り下げていくわね。

刹那的な楽しさの最中で死にたい――私も好奇心は強いほうだしショーを見て凄い衝撃は受けたけど、自分も身体を改造しよう!とはならないのよね。その壁って何かしら。

「逆にどうして?そこに嫌悪感がないのにやってみようとはならないの?」

――うーん、改造人間に興味はあるわ。でも普通の自分でいたい気持ちのほうが強いわね。

「理性がきくか、きかないかの差ってことだよね。タトゥーも舌割るのも身体に刺すのも、生きてく上で必要ないことだらけなんだけど、私は明日とかその先のことを考えない。私はやりたいと思った時に何でもやるし、いつ死んでもいいと思ってるから」

――タトゥー入れただけで温泉もプールも行けないものね。

「そうそう、要らないことだらけだよ。舌割ったら治そうと思ってもすぐには治らないし綺麗に元通りはならないし、私がやってることって人生に必要のないことがたくさんだけど、やりたいと思ったらすぐにそれをやらないと気が済まない」

――実行しないと自分に納得できない性分なのね。

「毎日楽しい、楽しい、と思ってたい欲が強いのかも」

――楽しいって感情って、普通に生きてたら結構刹那的なものだったりするでしょ?

「あ、そういえば最近楽しいと死にたくなるの」

――(笑)!

どういうこと!?

「楽しい絶頂で死にたいって気付いた。私って悲しい時とか落ち込んだ時に死にたくならないんだけど、『幸せー!』とか、『楽しいー!』とか、そういう絶頂で死にたくなるなぁって」

――私が好きな男とセックスしてる最中に死んだら幸せだろうな、って想像するのと似てるのかしら。

「そうそう。やりたいことを常にやっておかないと、いつ死ぬかなんてわからないんだから。自分がやりたいことで後悔するならそれで構わない。実際に後悔してることってないけど」

――家族とか周りの人は、仕事のことも改造のことも非難してきたりしないの?

「それは多いよ、いろいろ言われる。私のためを思って言ってくれるのかもしれないからひとつの意見として聞くけど、でも誰に何を言われてもその人たちが私の全てを面倒見てくれるわけじゃないし人生を保証してくれるわけじゃないでしょ。だから今楽しいと思ったことをやって死にたいっていうのは曲がらない。けど普通に生きてる人の、『長い目で見なよ』っていう意見も……その意見のほうが正しいのもわかってる」

――普通、やりたいことよりもやらなきゃいけないことのほうが多いからね。

「私は理性がきかないから。レイプ犯と同じだよ。私がレイプ願望のある男だったら、きっと連続レイプ魔になってる。普通は、『捕まっちゃうからAVでオナニーしよう』で終わるところが、私は『今あの女犯したい!』って思ったら否応なしに犯してる。子供なんだよね、理性きかないの。やりたいと思ったらやりたいの」

――最近やりたいと思うことは?

「本当は坊主にしたいけどモテないのは嫌だから思いとどまってる。坊主にしてもモテるなら今すぐする」

――顔が可愛いから坊主でも似合うかもね。小顔だし。

「うそ、やろうかな。普通に坊主にするだけじゃなくて頭のてっぺんだけハゲにしてそれを三日くらいに分けてちょっとずつハゲ部分を広げたい」

――……ごめん、それはモテなくなると思うわ。

「だよね(笑)……坊主じゃなくてもいいから、周りの女の子がやってないことをしたいな。身体改造とかだけじゃなくて、経験してないことで自分の感性に引っかかることならなんでも。今まではそれが痛い系だったりしたから、それが目立つだけであって」

――普通の子でいう「海外旅行行きたい」とか、そんな感じなのかもしれないわね。

「行ったことないから行きたい、っていうね。そうだね、海外旅行みたいなもん」

――でも旅行はみんながやれることだから興味を持たないんでしょ?

「写真で見たり話を聞くだけで行った気になって満足する。想像がつくことはやらなくていいかなって」

――本の情景描写で風景が浮かぶと、その世界に入り込んだ気分になるのと同じかしら。

「実際の目で見たら違うのかもしれないけどね。ハワイとか2回行ったけど2回目にしてもう飽きてた。でも身体で感じる痛みだったり興奮だったりっていうのは毎度違うから、やりたいことを考えると身体をいじることに結びつくかなぁ」

手に入れた瞬間、要らなくなる――仕事は慣れたらやめるって話してたけど、ショーの内容が毎回同じでも飽きない?

「ステージ(会場)は毎回違うし、会場ひとつでその時のテンションも変わるから全然飽きない。ずっと新鮮なまま、刺激を与えてくれる。セックスより気持ちいいと思う日もある」

――身体に何カ所も太い針を刺すわけじゃない?血も出るし、もし刺しどころを間違えたら出血多量で生死に関わったり……とかいうことにはならないの?

「そのへんのケアをちゃんとしてもらえるところじゃないとしないし、知識がある人が刺すから心配はしてないんだけど、万が一そうなったら……まぁそういう運命だと受け入れられるかな」

――その心意気じゃないとできないか……プロねぇ。身体を完全に人に預けるわけだから、怖くないの?

「その道のグレーゾーンの人だから慎重にやってくれるよ。本当は医療行為だから、あんまりどんな人がやってるとかは言えないけど……ボディピ開けるスタジオの人だったり、人体の出血の少ない箇所を勉強してる人がやってるって聞いた。あんまり大っぴらにはしてないみたい」

――ボディ・サスペンション以外で嫌なことはないって言ってたけど、縄師に縛られて吊るされたり、唇を縫って口が開かないようにするとか、両胸の谷間を縫い合わせて乳房をひとつにまとめるとか、……他のパフォーマンスもやってるじゃない?そのパフォーマンスでも嫌なことはないの?

「嫌なこと……とはまた違うんだけど、女王様と組んで針と糸で身体縫い合わせるのは、ステージ上でしか縫われたことがなかったから自己陶酔して集中してこれもまた気持ちいいんだけど、一回楽屋で『仕込みでお腹だけ縫ってこい』って言われてお腹だけ針で縫われた時、集中できなくて痛みで失神したことがある」

――ええええ……痛々しい……。

「私やっぱり人に見られてないとダメなんだなぁって」

――見られてる時の表情、輝いてたものね。

「なんかこう……ドヤァ!!ってなるんだよね。私のことみんな見てる、こんな屈辱的な私どうよ!?って(笑)」

――かっこいいわ。今までの話を踏まえると、今後の目標とか今の仕事を経てやりたいこととか、特にないわけよね?

「うん、例えば仕事を辞めるとしても、大好きな男の人ができて、その人が私の仕事の刺激の代わりになるものを与えてくれるっていうなら……くらいには漠然と考えるけど。今そんな人いないからなぁ」

――なかなかいないと思うわよ。カナエ自身がそれだけ強い刺激を知っちゃったんだから、それ以上の刺激をくれる男って……想像もつかないわね。

「仕事を辞めてもいいと思えるくらい男に対して惚れることもないから、目標って聞かれるとな……しばらくダラダラこの世界に居続けることくらいしか思いつかないな」

――どんな男の人を好きになるの?

「コンプレックスの塊みたいな人。ブサイクな部分を隠そうとして化粧して誤魔化したり、常にマスクしてる男の人とか、たまらない!(笑)」

――化粧する男はイヤだけど、コンプレックスがある人は私も好き。それを克服しようとしてるとこにきゅんとくるわ。その人間らしさがいいのよね。

「わー、ちょっと似てるね!例えば仕事と同等の刺激がある男が現れて辞めろって言ってきたら、もしかしたら辞めるんだろうけど……でも、どんな恋愛でも手に入っちゃうとつまらないんだよね」

――同感かも……。私のこと好きな人は可愛いなって思うけど。

「だからまた刺激が欲しくなったら戻ってくるかもしれないし。手に入らないものが欲しいわけであって……手に入るとすぐにわかるじゃない?服でも物でもなんでもそう。買って自分のモノになったり、心を開かれて人間性を知っちゃった時点でつまんなくなるんだよね」

――私もディスプレイされてる服とかジュエリーがどんなに素敵!欲しい!って思っても、手に入れた時点で魅力を感じなくなるタイプ。

「まさにそういうこと!欲しくてたまらなくてようやく買った靴があるんだけど、家に帰って見てみたらそんなに可愛くないな……って冷めて、3回履いたら要らなくなったり」

――手に入るかわからない不確かなものを追い求めたいのよね。

「ずっと不確かなままでいい。好奇心だけで生きてるから、わかりきったものにも手に入るものにも興味がない。どう転ぶかわからないものを、ずっと追いかけてたい」

赤裸々に人生観を語ってくれた過激パフォーマー・カナエ。「楽しい時に死にたくなる」という言葉に、私もはっとさせられた。確かに私も事故や震災、人に刺される……なんていう最悪な状況で死ぬよりも、「ハッピー!」と叫びながら朽ちていきたい。私にとってはそれが好きな男に抱かれている時だと思うわ。

実は、実際にボディ・サスペンションの現場を見た私の感想は「ゲー!」でもなく「怖い」でもなく、「美しい」だった。

ほぼ全裸に近い姿で身体を刺されるカナエは、悲鳴を押し殺したような声で苦痛に顔を歪めたが、そんな彼女の表情はとてもセクシーで、身体を宙に吊り上げられていき、伸びる皮膚を見て、人間の皮膚ってこんなに伸びるんだ……と驚いているうちに、くるくると回転し始める彼女。

皮膚は赤く盛り上がり、絶対に絶対に物凄く痛いはずなのに恍惚とし、観客たちの視線を一心に受け止めながら整った顔立ちの笑顔で宙を舞う。その姿は何にも比喩し難いが、人間ではなく天使のような……そんな神々しささえ感じた。

全身を委ねて身体の全てを使ったその姿には、アングラパフォーマンスという一言では到底片づけられないほどの感動を覚えた。ショーが終わると、カナエは横たわり流血しながら運ばれていく。肉体のすべてを捧げた仕事だ。

このような仕事の裏側なんて、実際見たことがない人のほうがまだまだ多いはず。次週はどんな「必殺裏仕事人」が登場するのかしら?お楽しみにね。

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